八月納涼歌舞伎 弥次喜多流離譚(やじきたリターンズ)が最高だった話

歌舞伎座で上演中の「八月納涼歌舞伎」第三部「弥次喜多流離譚」を観劇してあまりに最高だったので感想を書き殴ります。

なお観劇した日付は8月22日(月)。

團子さん、染五郎さんらが新型コロナ陽性となり、三部の公演が中止になったのが19日、代役で公演再開したのが翌日20日、そして濃厚接触者となっていた幸四郎さんの陰性が確認され、舞台に復帰されたのが観劇日の8月22日でした。

まさにジェットコースターのような数日間…

あじたま

七月歌舞伎の悲劇が脳裏をかすめつつ、毎朝祈るような思いで松竹のお知らせを開いた数日間でもありました。ほんっとに再開してくれてありがとう!!!!!

演目は「東海道中膝栗毛 弥次喜多流離譚(やじきたリターンズ)」
あらすじはこちら。

江戸木挽町の歌舞伎座で、大道具のアルバイトをしている弥次郎兵衛と喜多八二人は一攫千金を夢見てお伊勢参りに出発し、旅の途中で出会った若侍の梵太郎と供侍の政之助を道連れに、ラスベガスへ行ったり、殺人事件を推理したり、地獄へ行ったりとさまざまな騒動を巻き起こし、ピンチを切り抜けてきました。伊勢神宮の花火で天高く打ち上げられてしまった二人でしたが、あれから3年――。弥次喜多の二人は遠く離れた無人島に飛ばされ、何とか生き延びていました。あの手この手で長崎に渡り着き、古巣である歌舞伎座の苦境を知ります。歌舞伎座に戻るため、多くの人に出会い、立ちはだかる試練を乗り越えながら、新たな珍道中を繰り広げます。
『東海道中膝栗毛』は弥次郎兵衛と喜多八が東海道を旅する様子を描いた物語で、これまでに歌舞伎でも数多くの作品がつくられてきました。これらを下敷きに平成28(2016)年より新たなコンビで練り上げられた本作は、毎年話題を呼び、歌舞伎座の夏の風物詩となりました。3年の時を経て久々に登場する今回は、好評を博した配信版の図夢歌舞伎『弥次喜多』の舞台“家族商店“や、古典歌舞伎のパロディが随所に盛り込まれた奇想天外な物語、二人そろっての宙乗り、本水での立廻りなど見逃せない場面の連続です。抱腹絶倒の舞台にご期待ください。

歌舞伎美人より引用

とまあ色々書いてくださってますが、あらすじとかあってないようなものだよね(笑)帰宅後夫にどんなお芝居だったの?って聞かれて全く説明できなかったもんな。

ナイスコンビな弥次さんと喜多さんが、はちゃめちゃを繰り返しながら人助けをしたり、悪いやつに追いかけられたり、恋をしたり💜
パロディたっぷり、アドリブたっぷり、おもしろ小道具たっぷり、悪ふざけ(褒めてる)たっぷり。

私は弥次喜多シリーズを観るのは初めてだったのですが、予備知識ゼロで楽しめました。むしろ歌舞伎観るの初めての人でも楽しめる作品だと思う。
イヤホンガイドも普段の古典作品の時とは違って、解説というより、見逃してしまいそうなあれこれを教えてくれるっていう感じだし(かっこがカップラーメンでできてるの気づいてなくて慌ててオペラグラス覗き込んだ)なくても全然楽しめるのではないでしょうか!

物語の肝としてはやっぱり歌舞伎座。
弥次さん喜多さんの古巣である歌舞伎座が、流行り病による経営難で売られそうになっていることを知る…。

とまあ、お察しの通りコロナのせいで公演中止になったり、部ごとの入れ替え制になったり、客席制限をしたりしていた現代の歌舞伎座とかぶるわけです。
そしてなおかつ昨日は公演中止、そして代役を立てての再開となっているわけで。

芝居のはずなのに、芝居じゃない、あまりにリアルな感情、セリフたちにかなりグッときちゃいました。マイナスの出来事を全部まとめて受け入れて、それを芝居に変えて、笑いに変えて、前に進んでいく懐の深さ。

でもそれって並大抵のことじゃない。

今回の公演中止からの再開だって、代役の方々のセリフ量やら、踊りの量を見てこれ1日で稽古して幕開けたの?!ともう衝撃。そして発表されていないだけで裏方含め全体的に代役の嵐だろうし、筆舌につくしがたい大変なことだっただろうと…想像するだけでゾッとします。衣装、かつらもそうだし、イヤホンガイドも代役版に対応されていたし。それを…1日で…。

かつらってかつら合わせで地金をその人の頭に合わせて調整して、そこから結いあげる…わけですよね?少なくとも日本舞踊はそう。せっかくなので私のかつら合わせ中の地金姿をどうぞ(笑)

 

 

 

 

 


ここからかつらにしていくわけでしょ?代役の方々のそれ全部やったってこと…?まさにプロフェッショナル。普段からの積み重ねがあるからこそできること。もうこの裏側ドキュメンタリーにして放送してほしい。(中村屋さんの密着で第一部の様子は垣間見えるかしら?見せてください。フジテレビさんお願いします。)

コロナだからこれができない、あれができないと嘆いたり、コロナを見て見ぬふりして現実逃避したり。ここ数年、ぬぐってもぬぐいきれなかった頭の上のどんより雲がいっせいに晴れたような気持ちでした。芝居は何があっても続けなきゃいけないように、私の人生だって何があっても続けていかなきゃいけないんだ。私もやったるぞー!!全部飲み込んで、笑って、楽しんでいくぞー!!!

関係者のみなさまどうぞどうぞ千穐楽までご無事でめいいっぱい走り抜いてください。
本当に大変ななか幕を開けてくださった、全てのプロフェッショナルな皆さんへの感謝で胸がいっぱいです。

もしこのブログを読んでくださってまだ観ていない方がいたら是非是非是非歌舞伎座へ!

 

〜〜以下は記憶に残った色々〜〜

代役の方々。
きっと本役の方とは全然違うキャスティングになっているのでしょう。もう猿弥さんの見た目がずるい(笑)メディアやインスタで染五郎さんの精悍な梵太郎を見ていたからこそ、なんでこのキャスティング?!っていう(笑)でもこれはこれでものすごく面白かったし、転んでもただでは起きないぜ!という猿之助さんのニヤリが見える気がする。

多分観ていた方のほとんどが食べたくなったであろう文明堂のカステラ(笑)帰りに買いたい!と思ったら、当たり前ですが閉店していました。買うのであれば開演前じゃなきゃダメでしたね。

猿之助さんはなんていうかフォルムがめっちゃ可愛い。毎回やられているのかはわかりませんが、ザブエルからもらった服に着替えたとき履いていたズボンをビョンビョン伸ばしてて、変な鳥みたいになってるの可愛かった。

最高齢92歳の市川寿猿さん(家族商店の店長笑)がおはよう日本に出演されていたんですね。見逃した…
私のように見逃した方はこちらの記事をどうぞ。一緒に見た友達が送ってくれました。
NHKおはよう日本
この記事の説明見ても写真見ても、きっと見てない人はどんな内容の芝居なのか全然分からないだろうなって笑っちゃう。それにしても寿猿さんの宙乗りは本当にいい場面だった。たくさん拍手して、たくさん手を振って見送らせていただいた。

歌舞伎座の天井やら提灯があんなふうに照明が当たるなんて初めて見たし、知らなかった(笑)オペラ座の怪人風の音楽と共に上がっていくシャンデリアの提灯。そして点滅する周りの提灯たち。ほんとにお腹を抱えて笑わせてもらいました。あの競売の場面から、これはまさかオペラ座…?と思ってたけど、裏切らないなあ。こう来るかな?と思ってたら想像通りになる面白さってありますよね。くるぞくるぞ、きたー!みたいな。名刀が見つかるくだりとかも(笑)

本水の場面。ナウシカ歌舞伎(新橋演舞場)の本水の立廻りが好きすぎて、今回はちょっと物足りなく感じてしまいました。まあ、立ち廻りっていうより、水をバシャバシャ掛け合ったり、水の中に引きずり込んだり、遊んでるみたいで可愛かったのでいいです!笑
幕の向こうに水の気配を感じる、来るぞ来るぞー!ってなってからの幕が開いて大滝がドーンっていうのはやっぱりたまらなかったですね。納涼歌舞伎!

唯一残念だったのは、代役になったことで、早替えが全部カットだったこと。(きっと、とんでもない早替えだったことでしょう。観たかった!)
あと、幸四郎さん演じる弥次さんが、染五郎さん演じるオリビアに一目惚れする場面では、きっと親子ならではの楽しいアドリブもあったんだろうなーとか。
オリビアとお夏のモップ藤での藤娘が、梵太郎と政之助の供奴だったと言うのも…うーん、観たい!一体何を提灯にして踊っていたんだい?!

きっとシネマ歌舞伎とかで本役バージョンをかけてくださるだろうと。それを楽しみにしたいと思います。

踊り比べの場面で言えば、キラメキ組の親衛隊長をされてた鷹之資さんの踊りが好きすぎて、もうずっと目で追ってしまった。慌てて配役表見てお名前確認しちゃった。覚えたぞ!これはもう古典を踊っているところをじっくり拝見したい…!まさか道成寺(とんこつって書いたかっこ笑)やら吉原雀やらを見られると思ってなかったから、本当に嬉しかったしテンション上がった。ナウシカ歌舞伎の王蟲の前で踊る女踊り全部乗せみたいなナウシカもそうだったけど、こういう新作だったりスーパー歌舞伎と言われる演目のなかに突然古典のスパイス入れてくるのずるい。新しい挑戦をしながらちゃんと古典も大事にしていく歌舞伎の歴史を感じてグッときちゃうんだよ。

 

 

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